
イタリア北東部カーニア地方出身のアーティスト Massimo Silverio(マッシモ・シルヴェリオ) が、ニュー・アルバム『Surtùm』を 10月10日 に〈Okum〉よりリリースすることを発表し、新曲「Zoja」を公開した。
独自の言語「カーニック語」で歌うシルヴェリオは、イタリアの新しい音楽シーンの中でも最も個性的な存在として知られ、民俗的ルーツと前衛的感性を融合させた作風で高く評価されている。今回のアルバム『Surtùm』も全編カーニック語で制作されている。
先行シングル「Zoja」は、“葬送の花輪”を意味する言葉で、「終わりと始まり」を象徴する楽曲だ。シルヴェリオは次のように語っている。
「私は“何かのために”歌いたいと思いました。生のために、死のために。『Zoja』は、ひとつの象徴としての“循環”を歌っています。」
『Surtùm』は、2023年にリリースされた前作『Hrudja』から約2年ぶりの新作。前作で確立された独自の音世界をさらに深化させた本作は、David Sylvian や Anna von Hausswolff、Swans の荘厳なアレンジ、Massive Attack『Mezzanine』 にも通じるエレクトロ・アコースティックのミニマリズムなどを想起させるサウンドを展開する。
プロデュースは前作に続き Manuel Volpe が担当し、シルヴェリオ自身と共に Nicolas Remondino とともにアレンジを手がけた。ゲストには Mirko Cisillino(C’mon Tigre/ホルン、チューバ)、Flavia Massimo(Teho Teardo/チェロ)、Benedetta Fabbri(ヴァイオリン)、Martin Mayers(アルプホルン)が参加している。長年にわたるツアーを通じて築かれた強固な音楽的絆が、本作の深みを支えている。
シルヴェリオは本作について次のように語る。
「“記憶はどこに宿るのか”という問いが、このアルバムの出発点でした。現実と形而上的なものが触れ合う場所——その境界に惹かれました。そこでは、あらゆる行為や思いが静けさの中に沈殿していく。その“場所”への入り口は、私たちの皮膚や風景、家、森、草原や山々など、心や魂と交わるあらゆる場所にあるのかもしれません。」
『Surtùm』というタイトルはカーニック語で「湿地」や「沼地の草原」を意味する。シルヴェリオにとってそれは、祈りや歌が静かに沈み、再び命を得る“境界”の象徴でもある。
「現代という停滞した時代の中で、沼は“生と死のあいだ”、つまり変化と再生の象徴です。湿り気は命の息吹のようでもあり、雨上がりの風のようでもある。このアルバムには、その“湿度”が満ちています。泉(Avenâl)や胎内(水の祈りとしてのGrim)など、すべての生命をつなぐ循環の象徴として描かれています。」
彼はさらに続ける。
「今のような時代だからこそ、私たちは“人間性”と“自然への愛”という普遍的な祈りを送らなければならないと思うのです。暴力の少ない地域に生きる者として、私たちにできる唯一のことは、意味ある生を生き、死ぬこと。存在の意味をもう一度織り直すことです。」
本作は、静けさと祈りに満ちた精神的な旅路であり、現代社会の暴力性や分断を見つめながら、再生の可能性を探るアルバムとなっている。
Massimo Silverio(マッシモ・シルヴェリオ)について
マッシモ・シルヴェリオは、母語であるカーニック語(フリウリ語の古い方言)で詩的な歌詞を紡ぐシンガー/ソングライター。フォークとアート・ミュージック、古典と現代音楽、可視と不可視の境界を行き来する独自の音楽世界を築いている。
2023年にデビュー・アルバム『Hrudja』を〈Okum Produzioni〉よりリリース。イタリア国内外で高い評価を受け、『Mojo』『Clash』『Rolling Stone』『Rumore』などで紹介されたほか、KEXP の Kevin Cole、BBC6 の Iggy Pop、FIP Radio France や Radio Rai/Capital でもオンエアされるなど、国際的な注目を集めた。同作は「Targa Tenco賞」方言部門にもノミネートされ、多くの「Best of 2024」リストに選出された。
ツアーでは Jazz Is Dead、Locus Festival、No Borders、Import Export(ミュンヘン)、Linecheck、Paesaggi Sonori、Opera Festival など、国内外のフェスティバルに出演している。