Poppy『Empty Hands』 (January 23, 2026 / Sumerian)

Between the DoorsFEATUREREVIEWS1 month ago89 Views

Poppyはこれまで、ポップ/メタル/実験的ポップという異なる音像を次々に使い分けることで、ジャンルや期待そのものを揺さぶってきたアーティストだ。最新作となる7作目のスタジオアルバム『Empty Hands』では、その柔軟さがより内側へと向けられ、感情と音の“重さ”が同時に押し寄せるような作品になっている。

アルバムは、Sumerian Recordsから2026年1月23日にリリースされた。これは2024年の『Negative Spaces』に続く作品で、前作同様Jordan Fishがプロデュースに名を連ねている。13曲からなる『Empty Hands』では、インダストリアル、オルタナティヴ・メタル、ニュー・メタルといった幅広いエレメントが混在し、アグレッシヴなサウンドとポップなセンスの間を揺れ動く構造を持つ。

制作の背景には、先行シングルとして発表された「Bruised Sky」「Unravel」「Guardian」「Time Will Tell」といった楽曲群があり、これらがアルバムのトーンを早い段階で示していた。特に「Bruised Sky」は、重厚なギターと強いビートが組み合わさった楽曲で、ヘヴィなフレーズとメロディアスな要素が同時に存在する感触を持っている。

楽曲の多くは、金属的な質感を基調にしつつも、空間的な広がりや夢幻的なシンセのレイヤーが随所に配されている。これにより、従来のメタル寄りアプローチだけでなく、ポップとインダストリアル的な要素が同居する音像が生み出されている。その結果、激しさと静謐さとがせめぎ合うような美学がアルバム全体に浸透する。

しかし、これまでのリリースごとに大胆な変化を見せてきたPoppyにとって、『Empty Hands』は革新よりも“統合”の色合いが濃い。過去の作品で示してきたポップス的な感受性とヘヴィなサウンドの両極を、ひとつの作品としてまとめ上げることで、Poppy自身の内的多面性がより明確に浮かび上がっているようにも感じられる。

歌詞のテーマには、恋愛や喪失、裏切りといった個人的な感情が含まれると評価されており、これまで以上に“言葉と言葉の間”の感情が音楽と結びついているという指摘もある。また、視覚要素を強調したビデオ作品やパフォーマンス面でも『Empty Hands』期の表現は一貫しており、ライブでの熱量と密接に結びついた構造を持っていると見る向きもある。

一方で、こうした統合感には賛否もある。新しいサウンドの調和を評価する声がある一方で、過去の極端なジャンル間の跳躍を期待していたファンからは、同じプロデューサーとの継続的な制作が“音像の平坦化”につながっているという意見も聞かれる。

『Empty Hands』は、Poppyがこれまで築いてきた多様なスタイルを一本の線上に乗せ、それを力強い形で表現するための作品と言える。激しさとメロディ、過去と現在が混ざり合うこのアルバムは、彼女の表現の幅を改めて示すと同時に、次のステップへの布石とも言えるだろう。

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