
SFとレトロフューチャリズムへの憧れを、シンセサイザーやヴァイナル、ARポストカードまで含むひとつの世界へと広げたSUNESIS。『DESTINATIONS』に込めた5年間の音楽制作と個人的な旅、Syd MeadやVangelisから受けた影響、音を通して描くさまざまな場所と物語に迫る。
アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ、スペイン・バルセロナを拠点に活動するSUNESISは、シンセサイザーを通してさまざまな場所や物語を描き出してきた音楽プロジェクトだ。幼少期から音楽に親しみ、10代には複数のバンドやプロジェクト、シンセポップ・デュオのDebrisで活動。2016年にバルセロナへ移住した後、ハードウェア・シンセサイザーによる即興演奏の録音を始め、2018年頃からより構成された楽曲をSUNESISとして制作している。
2020年のEP『Music For Space Stations』、アルバム『ORBITAL』、EP『Mercury』と、それぞれ異なる宇宙や場所を想像しながら作品を作ってきた。2025年9月にヴァイナルで発表された『DESTINATIONS』では、これまでの5年間の音楽制作と個人的な歩みを振り返りながら、さまざまな場所を巡るような音楽世界を形にしている。
SFやレトロフューチャリズムへの関心もSUNESISの作品を形作る重要な要素だ。Syd MeadやEnki Bilal、70年代のSpace Airbrush Art、Isao Tomitaの『Cosmos』などから影響を受け、ハードウェア・シンセサイザーによるサウンドデザインと結びつけながら、映画的な情景や未来のイメージを音にしていく。『DESTINATIONS』には、ヴァイナルに加えてARポストカードも収録され、音楽をフィジカルな体験へと広げている。
今回のインタビューでは、『DESTINATIONS』が生まれたきっかけや、そのタイトルに込めた意味、SFとレトロフューチャリズムから受けた影響、シンセサイザーを使った制作方法、これまでの作品で描いてきた宇宙や物語、そしてリスナーに届けたい体験について話を聞いた。
―2025年9月に、『DESTINATIONS』をヴァイナルでリリースされました。このアルバムは、あなたにとって個人的にどのような意味を持つ作品でしょうか?
SUNESIS: 『DESTINATIONS』は、SUNESISとして音楽を作ってきた5年間と、私が作ってきた音やメロディーを通して、リスナーをさまざまな場所へ連れていこうとしてきた時間を表しています。
『DESTINATIONS』への反響は本当に素晴らしくて、こんなに素敵なフィードバックをもらえるなんて、想像もしていませんでした。リスナーのみなさんに贈りたいと思っていたもので、特別なものにしたかったんです。
―『DESTINATIONS』の制作を始めようと思った、最初のアイデアやきっかけになった出来事はありましたか?
SUNESIS: そうですね、私にとっては本当に楽しいことだったんです。バルセロナにはGaleries Maldàという「ギーク」なギャラリーがあって、そこには地元の起業家たちのお店があります。
VíctorとSofíaという素敵なカップルが、そこに「TheScifiNerds」というSFショップをオープンしていて、あるときお店を訪れたら、SFのヴァイナルを置くコーナーを作りたい、そこに私のヴァイナルがあったらすごくいいと言ってくれたんです。
それが頭の中でひとつのきっかけになって、「このコーナーに自分も参加したい」と思いました。何年分もの音楽や作品を、フィジカルな形に残したいと思ったんです。
でも、どうやって実現しよう? インディペンデント・アーティストとしては、そこへ至る道のりは少し複雑です……。
『DESTINATIONS』の制作では、収録曲の選定から、LPのマスタリング、自分に合ったヴァイナル・プレス工場探し、そして希望する色を決めるところまで、すべてが挑戦でした。大変ではあったけれど、とても素敵な学びの経験でした。
―このアルバムは、SFやレトロフューチャリズムへのトリビュートとも表現されています。制作する中で、こうした世界に惹かれたのはなぜでしょうか?
SUNESIS: 私は昔から、SFの本や映画、アニメ/マンガ、テレビシリーズ、ゲームなど、とにかく何でも大好きでした!
このジャンルはずっと自分の音楽にとってインスピレーションの源になっています。さまざまな現実や宇宙を想像できるからです。音楽は、そうした新しい場所を探検するための手段なんです。
『DESTINATIONS』は、レトロフューチャリズムとイラストレーターたちへのラブレターだと言いたいですね。Syd Meadの乗り物、Enki Bilalのディストピア、そして70年代のSpace Airbrush Artから直接影響を受けています。
―『DESTINATIONS』というタイトルからは、旅や移動、まだ辿り着いていない場所が想像されます。このタイトルには、あなたにとってどのような意味がありますか?
SUNESIS: 私はアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれ、子どもの頃から音楽がずっとそばにありました。10代の頃には、いくつものバンドやプロジェクトに参加していました。友人とシンセポップのデュオもやっていて、Debrisという名前で活動していました。
2016年にスペインのバルセロナへ移住することを決めました。そして、移民としてのより孤独で内省的な生活が、ある意味で、音楽を通して自分を表現し続ける方法を探すきっかけになったんです。
最初はハードウェア・シンセサイザーで即興演奏を録音し始め、その後、2018年頃に、より構成のある曲を作るプロジェクトとしてSUNESISを始めました。
『DESTINATIONS』では、長い時間をかけて積み重ねてきた、自分自身の成長と音楽的な進歩を捉えようとしました。自分のクリエイティブな世界のさまざまな場所を巡る旅なんです。
―アルバムを制作しているとき、特定の場所や未来、物語などを思い描いていましたか?
SUNESIS: 最初のEP『Music For Space Stations』(2020)は、温かく親密なサウンドを持っています。物語は、自分が宇宙ステーションのクルーの一員になったことを想像して作りました。孤独の中で、過去を懐かしみ、新しい地平線を望んでいるような状態です。
最初のアルバム『ORBITAL』は、「Space-Operas」を描いています。宇宙ステーションの内側と外側で起こる物語です。一方、EP『Mercury』は、この惑星をベースにしています。過酷な環境のために、おそらく忘れられている惑星です。放射線や重力、そして太陽への近さがあります。
Mercuryは、私の人生の中でもとても「素朴な」時期を表していました。たくさんのメンタル・ノイズを抱えていた、暗い時間です。でも、EPの最後は「Stellar」というヒーリング・トラックで締めくくっています。
そして最後に、『DESTINATIONS』は、宇宙のさまざまな場所へ私たちを連れていきます。まるで、人生の中で数えきれない冒険を経験してきたスペース・カウボーイのように、千の物語を横断していくんです。
『DESTINATIONS』は、これまでに過ぎていったもの、自分自身を見つめること、そして個人的な旅を振り返る作品になっています。
―そうした視覚的、映画的なアイデアを、どのように音へと変えていったのでしょうか?
SUNESIS: シンセサイザーには、映画のような情景を作るのに役立つ音を生み出せる可能性があります。私にとって、サウンドデザインは宇宙探索の一部なんです。
シンセサイザーそのものからインスピレーションを受けることも多いです。普段はProphet Rev2を使って制作や録音をしています。この楽器にはすごく惹かれるし、インスピレーションを与えてくれるんです。私を別の場所へ連れていってくれます。
―Syd MeadとVangelisは、『DESTINATIONS』のインスピレーションのひとつとして挙げられています。彼らの作品のどのような部分から、特に影響を受けていますか?
SUNESIS: Syd Meadは、未来のコンセプトをデザインするデザイナーで、未来的な情景をとても細かく描きました。彼の作品を眺めていると、この世のものとは思えない宇宙に入り込んでいくような感覚があります。
彼のデザインは、『Yamato 2520』、『Blade Runner』、『Alien』、『Star Trek』など、多くのSF映像作品に登場しています。
Vangelisは、すごく興味深いメロディーの方法で未来の音楽を作りました。父が1989年のカセット・テープ『Themes』をよく聴いていたんです。
私にとってVangelisは、シンセサイザーを使った制作方法やサウンドデザインに影響を与えてくれた存在です。
―アルバム制作の中で転機になった曲、あるいは作品全体の方向性を決めるのに重要だった曲はありますか?
SUNESIS: 「Port Mirada」と「Surreal」は、このアルバムのために制作した曲です。
「Port Mirada」は、親友のArianeが声を担当していて、私が表現したい映画的な世界へと入り込ませてくれる曲です。
「Surreal」は、いくつもの重なり合うパターンが寄り添う、夢のような曲です。
「Surreal」という言葉は、LPを自分ひとりでリリースすることを決めたインディペンデント・アーティストの努力を表す言葉でもあります。誰がそんなことを思いつくんでしょうね? 😉
でも、それがもたらしてくれた達成感は本当に大きかったです! ぴったりのヴァイナル・プレス工場を探すところから、LPのプロモーションまで。
そして「Surreal」は、このLPを買ってくれた人たちからもらった素晴らしい反響そのものでもあります。本当に感謝しています!
―『DESTINATIONS』には、聴いただけではすぐに気づかないような物語や意味を持つ曲はありますか?
SUNESIS: はい。「Teardrop」は、Massive Attackの曲を自分なりにカバーした、とても個人的な作品です。
この曲は、いくつかのハードウェア・シンセサイザーを使って録音しました。ここでは、小さなKorg Volcaが大きな役割を果たしています。
私の声がパッドのような役割をして、ほかの音を支えているのも聴こえると思います。
このインストゥルメンタル・カバーを聴くと、私はとても穏やかな気持ちになります! でも、ライブでは歌詞を歌うのが本当に楽しいです。
―アルバムの広大で映画的な雰囲気と、そこにあるより親密で人間的な要素とのバランスは、どのように考えていましたか?
SUNESIS: すごくいい質問ですね。これはSUNESISというプロジェクトを特徴づけるもののひとつだと感じています。
あの映画的で広がりのある側面が、最終的には自分自身と向き合う、親密な時間へと連れていってくれるんです。
宇宙ステーションのラウンジにいて、ノスタルジーに包まれながらカクテルを味わっていたり、次の宇宙ジャンプを計画していたりするような感覚を作りたかったんです。
―『DESTINATIONS』のサウンドを作るうえで、ハードウェア・シンセサイザーはどのような役割を果たしましたか?
SUNESIS: アルバムの大部分はProphet Rev2で録音しました。できることなら抱きしめたいくらいです!
このシンセサイザーのおかげで、繊細だったり、粗かったり、ざらざらしていたり、滑らかだったり、温かかったり、攻撃的だったり、さまざまな音を作ることができました。
それぞれの曲には特別な質感があって、その多くはこのシンセサイザーのおかげです。
もうひとつ、よく使っているのがKorg Wavestate MKIIです。デジタル・シンセサイザーで、とても複雑で、大きな可能性を持っています。
それからRoland Juno-106も使っています。
「レトロフューチャリスティック」なサウンドを作るには、たくさん遊んでみること、失敗することを受け入れること、そして決まったパターンから抜け出すことが大切だと思います。
『DESTINATIONS』は、こうした楽器が持つクリエイティブな可能性を示す作品でもあります。
―レコーディング中に起きた予想外の発見や偶然、出来事の中で、最終的なアルバムにとって重要になったものはありましたか?
SUNESIS: 曲順を決めること、そしてどの曲をどちらの面に入れるかを選ぶことが挑戦でした。でも最終的には、それぞれの面に完璧な雰囲気ができたと思います。
―『DESTINATIONS』をヴァイナルでリリースし、ARポストカードも付けたのはなぜですか? 単に音楽を聴くだけではなく、それ以上の形でアルバムを体験できるものにしたかった理由を教えてください。
SUNESIS: ジャケット・アートは、アメリカ人デザイナーのGreetingsEarthlings!がBlenderで制作した3Dデザインで、バックカバーはメキシコ人デザイナーのSamantha BalderasがProcreateで制作しました。
どちらのデザインも、電子音楽のパイオニアであるIsao Tomitaのアルバム『Cosmos』から影響を受けています。『Cosmos』には、1970年代のエアブラシで作られた美しいデザインがあります。
ARポストカードは、GreetingsEarthlings!とTheSciFiNerdsによる素晴らしいアイデアです。まさにさまざまな目的地を巡る旅であるこのアルバムに、未来的でユニークな要素を加えてくれました。
ポストカードは、SF映画やシリーズ、ゲームなどで知られている場所へ招待するものです。
QRコードをスキャンすると、カメラでマーカーを読み取れるようになり、その手のひらの上に惑星や月の3Dモデルが現れて回転します!
「レトロフューチャリズムへのオマージュ」と、クラシカル・アートとデジタル・アートという考え方に沿ったものです。AIがますます多くのアートの領域を占めるようになっている時代に。
―これまでSUNESISを聴いたことがない人がいたとしたら、『DESTINATIONS』のどの曲から聴き始めることをおすすめしますか? その理由も教えてください。
SUNESIS: 「Onboarding Medley」は、「Port Mirada」に続いて、私の宇宙へと迎え入れてくれる曲です。
クレッシェンドを描きながら盛り上がっていく曲で、聴くのがすごく好きなんです。
―最後に、今日はお時間をいただきありがとうございました。今回のインタビューを通して、読者のみなさんに何か伝えたいことがあれば教えてください。
SUNESIS: 没入、リラックス、そして自分自身とつながるための時間。
本当にありがとうございました!

ブエノスアイレス出身、バルセロナを拠点とするプロデューサーMelisa Blombergによるソロプロジェクト。ダークでシネマティックなエレクトロニクスを軸に、“Spacewave”と呼ぶ独自の音楽世界を展開する。アルゼンチンのLa Siesta del FaunoでKlaussのErnesto Romeoに師事し、サウンド・シンセシスを学ぶ。2023年にはKeychange Artistとして800名の応募者から74名のグローバル・イノベーターに選出。MUTEK ES、Way Out West Festival、Sala Apoloなどに出演し、Mixmag Spain、Beatburgerでも紹介された。8人編成のシンセサイザー・アンサンブルSynthSurfersEnsembleのメンバーとしてヨーロッパ・ツアーも行っている。
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