Cowboy Hunters『EPeepee』

グラスゴーのデュオ、Cowboy HuntersがEP『EPeepee』をセルフリリース。重いリフと激しいドラムにシンセやダンスビートを重ね、社会への怒りや不満を皮肉とユーモアに満ちた歌詞で表現する。パンクとレイヴ、ポップの感覚が入り混じる全5曲、約10分の作品。

Cowboy Hunters『EPeepee』(2026 / Self-released)

パンクの衝動にポップの感覚と皮肉なユーモアを重ねる、グラスゴー発のデュオによるEP

スコットランド・グラスゴーを拠点に活動するCowboy Huntersは、Megan PollockとDesmond Johnstonによるデュオだ。ベースとドラムを交代で演奏し、どちらもボーカルを担当する2人は、パンクの荒々しさにダンスミュージックやポップの感覚を取り入れた音楽で注目を集めている。2023年には5曲入りEP『From One Speck of Dust to Another』を発表しており、2026年3月20日にセルフリリースされた『EPeepee』は、全5曲、約10分という短い作品だ。

彼らの音楽には、社会への不満や日常の苛立ちが色濃く反映されている。生活費の高騰、政治への不信、先行きの見えない社会状況。それらを題材にしながらも、Cowboy Huntersは深刻な表情でメッセージを訴え続けるようなバンドではない。過激な言葉や下品なジョークを盛り込み、踊れるビートに乗せて歌う。Rolling Stone UKのインタビューで、Desmond Johnstonは「世界が終わろうとしている。だから自分たちはパーティーを開いている」と語っている。絶望的な状況を笑い飛ばすような態度だが、彼らの歌詞にある怒りや不満までが冗談というわけではない。

Spotify配信版の冒頭に収録されている「Shag Slags Not Flags」は、そうしたCowboy Huntersの姿勢がよくわかる曲だ。重く歪んだリフに乗せて2人が交互に歌い、タイトルを連呼するコーラスへと突入する。挑発的なタイトルの背後にあるのは、ナショナリズムやオンライン上で排外的な言動を繰り返す人々への批判だ。彼らは政治的な主張を整然と説明する代わりに、皮肉と露骨な言葉を使って相手を挑発する。ユーモアが攻撃性を和らげるというより、むしろ批判の鋭さを増しているところが面白い。

続く「Have A Pint」は、シンセのバッキングから重いキックドラムへと展開し、Megan Pollockの乾いた歌声が加わる。社会への不満を口にしながら、最後には一杯飲んで踊ろうと呼びかける曲だ。The Skinnyのインタビューでは、現在の社会状況に対する若い世代の感覚を表す楽曲として紹介されている。現実にうんざりしながらも、仲間と酒を飲み、音楽に合わせて身体を動かす。「Have A Pint」の歌詞にある開き直りは、単なる現実逃避とも少し違う。どうにもならないことばかりの世の中で、それでも楽しく過ごす時間くらいは自分たちで作ろうという感覚がある。

3曲目の「Dust Caps」では、曲の途中で空気が一変する。すべてうまくいくと安心させるような言葉が、突然の否定によって覆され、激しいサウンドと叫ぶようなボーカルが押し寄せる。God Is In The TVのレビューでも、この急激な展開と、そこから噴き出す怒りが取り上げられている。ほかの楽曲で聴かれる軽妙なユーモアとは異なり、ここでは不満や反発がむき出しになっている。短い曲のなかで穏やかな場面と激しい演奏を切り替える構成が、2人のパンク・バンドとしての攻撃性を際立たせる。

「Money for Drugs」は、ドラッグを買う金を求めるという直接的な言葉が印象的な曲だ。Desmond Johnstonが歌を担当し、途中にはつまずくようなビートやテンポの変化が挟み込まれる。終盤には語りに近いボーカルも登場し、約90秒のなかで目まぐるしく展開する。題材は挑発的だが、彼らはそこに説教や悲劇的な物語を持ち込まない。切迫した言葉を荒々しいビートに乗せて歌う一方、その演奏にはどこかふざけた感覚も残っている。笑っていいのか迷うような内容を、ためらいなくダンスミュージックの勢いで押し切ってしまう。

最後の「Cuntry Gurl」は、反復するベースラインを中心に、激しいドラムとシンセによるブレイクダウンを組み合わせた1分33秒の楽曲だ。「Serve cunt not countries」というフレーズに表れているように、ここでもナショナリズムへの反発が挑発的な言葉遊びに変えられている。The Skinnyのインタビューによれば、彼らは以前この曲をライブで演奏しようとしたものの、出だしを何度も間違えて断念したという。本人たちが曲を「呪われている」と冗談交じりに語るあたりも、Cowboy Huntersらしい。短い演奏時間のなかにベースの反復、ドラムの激しさ、電子音の奇妙な響きが詰め込まれ、最後まで落ち着く暇を与えない。

Cowboy Huntersの音楽を考えるうえで興味深いのは、彼らがThe Sex PistolsよりもKeshaに親近感を抱いていると公言していることだ。The Skinnyのインタビューで、Johnstonは自分たちをパンクのなかでも異なる系統に位置づけ、世界を変えることよりポップに関心があると語っている。また、Rolling Stone UKでは、以前ドゥームメタルのバンドで活動していたことも明かしている。現在の楽曲についても、リフ自体はドゥームメタルの延長にあり、それを速く演奏することで人々が踊れる音楽になったという説明だ。重いリフと激しいドラムを土台にしながら、シンセやダンスビートを加え、ポップソングのような即効性を持たせる。彼らがパンクとレイヴ、ポップの間を自由に行き来するのは、こうした音楽的な背景があるからだろう。

『EPeepee』には、社会への怒りを歌うパンクの切実さがある一方で、深刻になりすぎることを拒むような軽さもある。過激な歌詞とユーモア、重いリフと踊れるビートが同時に鳴り、どの曲も2分前後で終わってしまう。もう少し聴いていたいと思うところで次の曲へ移る性急さも、このEPには合っている。短い作品だけに、楽曲ごとのアイデアを十分に掘り下げる余裕はないが、その分、彼らが何を面白がり、何に腹を立てているのかが率直に伝わってくる。

世界を変えられるとは思っていなくても、目の前の状況を笑い飛ばすことはできるし、音楽に合わせて踊ることもできる。Cowboy Huntersにとって、その二つは反抗することと矛盾しないのだろう。『EPeepee』は、政治的な怒りと悪ふざけ、パンクの攻撃性とポップへの愛着が入り混じった作品だ。わずか10分のEPだが、グラスゴーのこのデュオが何者なのかを知るには十分だ。

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